第64章 父親の欄は空白だ

数日後――立花グループ、立花時安の執務室。

辻本雨妃はデスクの向かいに腰を下ろし、手元の書類を立花時安へ差し出した。

「先週分の実験データです。整理しておきました」

声は冷ややかで、無駄がない。

「新素材の安定性が想定より3%上がっています。次の段階のテストに進めます」

立花時安は受け取り、ざっと目を通す。口元に笑みが浮かんだ。

視線を上げ、雨妃を見て、素直に言う。

「さすがだな」

辻本雨妃は小さく笑う。

「持ち上げないで。データはチームで出したものよ。私ひとりの手柄じゃない」

立花時安は頷いた。腕もあるのに、驕らない――そういうところが、彼女らしい。

「じゃあ今夜、君...

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