第66章 あきらめろ

日野遥は、浅井景辰の異変に気づいた。三人の背中を見送るその瞳の奥に、どす黒い怨毒が渦巻く。

目の見えない人間だって分かる。浅井景辰は、辻本雨妃というクズを、日に日に気にするようになっている。

離婚してもう五年。いま彼の婚約者は、自分――日野遥のはずだ。

なのに、どうして彼の視線も意識も、いつだってあのクズに吸い寄せられるのか。

挙げ句の果てに、あのクソガキのせいで林田唯まで異動させた。

林田唯は、ようやく金で抱き込んだ貴重な目だったのに。辻本雨妃の息子のせいで降格同然だ。

母子そろって、消えてしまえばいい。

日野遥は深く息を吸い、表情を整えると、浅井景辰の視界を遮るように一歩前...

ログインして続きを読む