第7章 もう手を放していい

それは辻本雨妃だった。

六年という歳月は、彼女から何ひとつ奪っていない。むしろ磨きをかけ、以前にも増して華やかに、艶やかな女へと変えていた。

傍らの日野遥も辻本雨妃に気づいたらしく、さっと顔色を変えた。そっと彼の手を引き、小声で呼ぶ。

「景辰……」

けれど浅井景辰は聞こえていないかのように、ただ舞台だけを見据えていた。

スポットライトの下で、辻本雨妃はトロフィーを受け取り、微笑みながら客席へ一礼する。

その視線が浅井景辰に触れた瞬間、彼女は唇をきゅっと引いてほほえみ、何事もなかったように目を逸らした。

まるで、見知らぬ他人でも見るように。

浅井景辰はその場で足を止めた。わずか...

ログインして続きを読む