第9章 心はやはり痛む

そう言って、浅井景辰はエレベーターに乗り込もうとした。

そのとき、日野遥が彼の名を呼びながら、足早に中へ入ってくる。

景辰の隣に立つと、遥は唇をきゅっと結び、何気ない世間話でもするような柔らかさで口を開いた。

「まさか雨妃が、あんなに幸せそうにしてるなんてね。立花社長は若くてやり手だし、さっきの取材でもあんなに雨妃を庇ってたし。景辰、雨妃もやっと自分の幸せを見つけたのよ。私たち、ちゃんと喜んであげるべきなんじゃない?」

浅井景辰は眉をわずかに寄せたまま、何も答えない。

胸に響いていないと見て取ると、日野遥はさらに声を和らげた。

「景辰……何を考えてるの?」

浅井景辰は小さく息を...

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