第42章 わざとキスしたの

「叔父さん、また私を救ってくれてありがとう」安田美香は瞳に感謝の気持ちを溢れさせた。

藤原時は身を翻し、淡々とした口調で言った。「少しは自分で身を守る意識はないのか?」

「え?」

「柵につかまって自分を救おうとしなかったのか?」

安田美香は心の中で思った。藤原時はやはり賢い、自分の思惑を見抜いたのだ。

彼女は一歩前に出て男性の背後に立ち、鼻にかかった声で言った。「私、横目であの影を見かけて、ぼーっとしてしまったの。水に落ちてから気づいたけど、あれは幻覚だったみたい。自分を救おうとした時には、安田柔子が私の帯を引っ張ってスクリューの方に引きずり込もうとしていて...叔父さん、あの時本...

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