第50章 高坂さんのイヤリング、どうやら叔父さんが落札したらしい

藤原辰は安田柔子と共に視線を向けると、二人の麗しい姿が近づいてくるのが見えた。

藤原辰は安田美香を見つめたまま目を離せないでいた。その気高く清らかな、揺れ動く姿に魅了されていた。

なぜ当時、あんなに審美眼が悪かったのだろう?

もっと早くこんな風に装っていれば、今、自分の隣に立っているのは彼女だったのに。

彼は嫌そうに安田柔子の手を振り払い、前に進み出ると優しく情熱的に言った。「安田美香、来てくれたんだね」

安田美香は冷ややかに彼を一瞥し、さらに二メートル先で鋭い眼差しを向ける安田柔子を見た。「藤原様、あなたの婚約者が見ていますよ」

藤原辰は低い声で言った。「安田美香、君さえ良けれ...

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