第13章

部屋に戻った藤堂詩織は、簡潔で洗練された服に着替え、薄化粧を施した。鏡に映る、眼差しに再び輝きを取り戻した自分を見つめ、深く息を吸い込む。

まずは会社を少し見て回り、基本的な状況を把握して、今後の入社に備えるつもりだ。

結城時也が手掛ける事業は多岐にわたるが、最近彼が最も重視しているのは間違いなくテクノロジー産業だった。

道中、藤堂詩織の心境はどこか複雑だった。

未来への憧れもあれば、未知への不安もある。自分のこの決断が正しいのか間違っているのかは分からない。だが、勇気を出してこの一歩を踏み出さなければならないことだけは分かっていた。

その頃、結城テックビルの中は、異様なほどの熱気に...

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