第17章

画面に「結城沙耶」の三文字がポップアップ表示され、彼女は指先を微かに動かし、通話ボタンをスワイプした。

「ママ、今日、私たちを迎えに来てくれる? もし不便だったら、大丈夫だからね」

電話の向こうから少女の澄んだ声が聞こえ、その合間に男の子の甲高い声が混じっている。

藤堂詩織は車のエンジンをかけた。「迎えに行くわよ。もう向かってるから、安心して」

電話の向こうから微かなため息が聞こえ、それに続いて少女の少しがっかりしたような声が届いた。「そっか、わかった」

電話を切り、彼女は前方の渋滞する車列を見つめ、ふと静かに息を吐いた。

結城沙耶の言葉にどんな意味が込められているか、もちろん彼女...

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