第24章

御隠居様はわずかに眉をひそめ、その声には明らかな不快感が滲んでいた。「自分のものが見つからないのなら、妻が会社に届けるのが筋だろう。電話一本で済む話なのに、わざわざ君のような従業員を煩わせ、しかもプライベートな時間まで使わせるとは。あいつはCEOの座に飽きたとみえる。部下をこき使うことしか知らんのか!」

白川詩帆は慌てて手を振り、恐縮したような表情を浮かべた。「結城の御隠居様、そんなことをおっしゃらないでください。結城社長のお役に立てることは、私の光栄ですわ」

彼女はそっと伏し目がちになり、長いまつ毛が目の下に小さな影を落とした。

「実は……こうして御隠居様にお会いできる機会をいただけて...

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