第28章

まもなく、ドアノブが回された。

入ってきた結城時也は眉をひそめ、淡々とした口調で言った。「用があるなら、スマホで済ませられたはずだが」

彼は彼女を見ようともせず、視線はベッドサイドのランプに注がれている。まるで彼女を一瞥することすら無駄だとでも言うように。

藤堂詩織が口を開かないのを見て、結城時也は身を翻して立ち去ろうとした。「用がないなら、下に降りる」

藤堂詩織の心は、冷たい深淵に落ちていくかのように沈んでいった。

彼女は深く息を吸い込み、喉の奥にこみ上げる苦味を抑え込んだ。「お祖父様はまだお休みになっていません」

結城時也の足が止まった。

「家にはまだお客様もいらっしゃいます...

ログインして続きを読む