第33章

結城時也はレストランの隅々まで探し回ったが、藤堂詩織の姿は見当たらなかった。

「画展がつまらなくなって、先に帰っちゃったのかしら」白川詩帆が尋ねた。「だって、詩織お姉さんはもともと絵画に詳しくないですし、今日ここに来るのも無理をさせてしまったのでしょうね」

しかし結城時也はスマートフォンに目を落とし、首を横に振るだけだった。「彼女が帰るなら、必ず先に連絡してくるはずだ。きっとまだお腹が空いていないだけだろう。放っておけばいい」

結城時也は藤堂詩織を気にも留めておらず、白川詩帆はもちろんそれ以上触れることはなかった。

皆、藤堂詩織のことはすっかり頭から抜け落ちていた。

一方、藤堂詩織は...

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