第34章

河合麗と藤堂詩織が楽しく談笑していると、コーヒー一杯を飲み干す頃合いに、河合麗の弟がやってきた。

河合麗は慌てて立ち上がり紹介する。

「詩織ちゃん、この子が私の弟。今日、白川詩帆の画展に行ったっていう」

藤堂詩織が振り返ると、佐伯俊彰が驚きに目を見開いているのと目が合った。

男はまだ手にしていたバックパックを放す間もなく、彼女を指差したまま言葉を失っている。

「あ、あなたは午前の……」

藤堂詩織ははっと気づいた。

「ああ、あなたでしたか」

河合麗の訝しげな視線を受け、藤堂詩織は説明した。

「今日の午前、画展でお会いしたばかりなんです。同じく起業準備中の方を紹介すると言ったでしょう、彼...

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