第43章

高級レストランの中、二人の子供が白川詩帆を取り囲んでいた。何かを話しているらしく、白川詩帆は腹を抱えて笑っている。

結城時也は傍らに座り、その視線を子供たちに注いでいた。その眼差しには、珍しく温かい色が宿っている。

彼は手を伸ばすと、自ら白川詩帆の皿に魚を取り分けた。その動作は自然で、親密さに満ちていた。

一方、電話の向こうでは、結城和がまだ受話器に向かって素っ気なく言っている。

「母さん、これからクラスの友達とご飯なんだ。用がないなら切るよ」

藤堂詩織は、画面に映るその不機嫌な横顔と、慌ただしく電話が切れるビジートーンを聞き、心が何かに強く締め付けられるのを感じた。

彼女にははっき...

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