第52章

壇下からにわかにどよめきが起こった。皆の視線にわずかな変化が生まれたが、それでもなお藤堂詩織に注がれている。彼女が本当にただの理論派なのか、その真偽を見極めようとしているかのようだった。

藤堂詩織の視線が、プロジェクターのスクリーンから白川詩帆の顔へと移る。

その精緻な化粧を施した顔は、心配しているかのような仮面を被っているが、その眼底に宿る悪意はほとんど溢れ出さんばかりだった。

藤堂詩織は表情を変えず、壇下の疑念を意にも介さない。

「白川さんはお忘れのようですね」

彼女の声がマイクを通して響く。それは客観的な事実を述べるかのように平坦で、侮辱されたことによる動揺は微塵も感...

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