第57章

深夜。

研究室にはまだ、いくつかの灯りが点っていた。

藤堂詩織は山積みになった書類とメールの処理をようやく終え、凝り固まった首筋を揉みほぐした。

スマホを手に取る。

画面には二件の不在着信。いずれも結城時也からだった。

そして、ショートメッセージが一件。

差出人は、沙耶。

【ママ、パパがママは私たちのこと、もういらないんだって。本当?】

短い数文字が、氷で研がれた針のように、心臓のど真ん中に突き刺さる。

藤堂詩織はその一行をじっと見つめた。指先が氷のように冷えていく。

彼女は長いこと黙っていた。

そして、指先がゆっくりと画面の上を動き始める。

【沙耶、ママはあなたと和を永遠に愛している...

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