第64章

白川詩帆は結城時也の反応をすべて目に収め、心の中の得意な気持ちを隠しきれなくなりながらも、声のトーンはさらに優しくなった。

「午前中ずっと会議でお疲れでしょう。詩織さん……彼女は今、きっと忙しいでしょうし。よかったら、私が学校まで子供たちを迎えに行きましょうか? 美味しいものを食べに連れて行って、ケーキでも買って。子供の誕生日ですもの、やっぱりちょっとした特別感は必要ですわ」

その言葉は配慮に満ち、あらゆる点で彼を気遣っているように聞こえたが、同時に、藤堂詩織という母親が、今まさに自分の事業のために「忙しく」、子供の誕生日すら気にかけられないでいるという事実を、彼にそれとなく思い出させるも...

ログインして続きを読む