第73章

彼女は淡々と「ええ」とだけ返事をすると、二人の子供をチャイルドシートに乗せ、シートベルトを締めてから、車を走らせて結城家へと向かった。

道中、結城沙耶はずっとこそこそとメッセージを送っていた。白く柔らかな小さな顔は、ある時は憂いを帯び、ある時は喜びに満ち、わざと藤堂詩織に背を向けて、気づかれまいとしている。

その表情から、藤堂詩織は彼女が白川詩帆にメッセージを送っているのだと察することができた。

胸がわずかに締め付けられ、息苦しい感覚が胸腔にまとわりつき、とても辛かった。

車が屋敷の門の前で停まる。

藤堂詩織はまず二人の子供を車から降ろし、それからトランクから、まだ渡せていなかった誕...

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