第79章

だが、白川詩帆が落札しようとしたその時、林燁が突然声を上げた。

「二億」

彼は結城時也に視線を送り、金縁眼鏡のブリッジを指で押し上げながら、穏やかに微笑んだ。

「結城社長、譲っていただけませんか」

結城時也はかすかに口角を上げる。「次の機会に必ず」

「三億」

林燁は結城時也を一瞥したが、何も言わなかった。

もちろん、さらに値を吊り上げることはできる。だが、それだけの価値はない。

藤堂詩織の胸が詰まる。

彼女が目を付けていた三つの競売品のうち、これで二つが白川詩帆の手に渡ってしまった。

まさか今夜、本当に手ぶらで帰ることになるのだろうか?

さらにいくつかの...

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