第80章

その場にいた者のうち、柏木氏を除いて皆、藤堂詩織が結城時也の妻であることを知っていた。

しかし、彼らは皆、結城時也の目に映るのは白川詩帆だけで、籍を入れただけの〝結城の奥様〟である藤堂詩織のことなど気にも留めていないことも知っていた。

特に杉山防然は白川詩帆の親友であり、藤堂詩織のことがとりわけ気に食わなかった。藤堂詩織は腹黒く、本来白川詩帆のものだったすべてを奪った女だと思い込んでいる。

杉山防然はわざと藤堂詩織のそばに寄り、低い声で脅した。

「少しでも分を弁えているなら、今のうちにさっさと消えなさい! わざと自分の棋力を見せつければ結城社長が振り向いてくれるとでも思ったの? あなた...

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