第82章

結城時也は一瞬動きを止め、自ら彼女を車まで見送り、優しい声でなだめた。

「先に帰ってて。和の様子を見てから、君に会いに行くから」

白川詩帆は目を伏せて恥ずかしそうに微笑み、そっと「はい」と頷いた。

……

一方、藤堂詩織は林燁の後について車に乗り込んだ。

座った途端、林美薇が飛びかかってきて彼女を抱きしめた。

「詩織ちゃん、大丈夫?」

先ほど藤堂詩織が結城時也や白川詩帆と鉢合わせたと聞き、彼女がいじめられるのではないかと心配になったのだ。林燁に家に連れて帰ると言われた際には絶食で抗議し、無理やり林燁に藤堂詩織を探しに行かせて、ようやく気が済んだのだった。

藤堂詩織は首を横に振る。...

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