第67章

水宮雪音はそのまま男の胸にぶつかった。見上げた先、燃え盛る怒りを宿した瞳がある。

『江原翼、放して!』

江原翼は冷え切った顔のまま、歯を食いしばる。

『放さない』

『……いったい、どうしたいの?』

雪音は怒りを噛み殺しながら問い返した。瞳の奥に、ひやりとした光が走る。

ここでこれ以上、揉めている場合じゃない。けれど今の江原翼は完全に頭に血が上っていて、彼女の手を離す気配がない。

雪音は俯き――その腕に、容赦なく噛みついた。

「……っ」

江原翼が喉の奥で低くうめる。だが次の瞬間、彼は雪音をさらに強く引き寄せた。

(今日、出てきたのが間違いだった……)

江原翼は、正真正銘の...

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