第20章 海に墜ちる

杉浦杏奈は岩陰にしゃがみ込み、何度も深呼吸して、胸の奥で煮え立つ悪意をどうにか押し殺した。

藤原智彦と杉浦美雪は、わずか2メートル先にいる。今すぐ飛びかかってやりたい――そんな衝動が喉元までせり上がる。

月明かりが二人の顔を照らしていた。美雪は俯いたままスカートの裾を整えている。小花柄のワンピースの下、救命胴衣の輪郭が不格好に浮き上がっていた。

智彦は彼女の傍に立ち、片手で支え、もう片方の手でスマホを取り出す。

田中海次はまだ機材を落としている。1台、2台、3台……。

赤い表示灯が、ひとつずつ闇に消えていった。

杏奈はナイフを握りしめ、乾いた唇を舌先で湿らせる。

灰原仁司のいる...

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