第36章 できるようにする

杉浦杏奈は杉浦正弘を見つめたまま、ぴくりとも動かなかった。

分かっている。杉浦正弘が自分を行かせるはずがないと。まだ、自分が出ていくべき時じゃない。

自分が杉浦家を離れれば、信託基金は自動的に管理口座へ移る。そうなれば、杉浦家には一銭も入らない。

杉浦正弘は、あの日を待って何年も自分を飼ってきた。口元まで運ばれた獲物を、みすみす逃がすような男じゃない。

案の定、杉浦正弘の怒りは早かったぶん、引くのも早かった。

彼は深く息を吸い込み、たちまち慈愛に満ちた父親の顔に戻る。

「杏奈、父さんはそういう意味で言ったんじゃない」

杉浦正弘は歩み寄ると、彼女の肩をぽんと叩いた。

「お前はい...

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