第46章 今日は無理だ

灰原仁司の身体が覆いかぶさる。片手で彼女のうなじを押さえ、もう片方の手で腰を掴む。唇が触れた瞬間、長く押し殺してきた飢えみたいな焦りが滲んだ。

……キスじゃない。噛みつく。

口角から顎、耳たぶへ。執拗に食み、貪る。力任せで、まるで彼女をばらしてしまうみたいに。

杉浦杏奈は押さえつけられて身動きが取れない。彼のシャツの襟元を掴み、指に力が入っては抜け、抜けては入る。揉まれた布はぐしゃぐしゃに皺を刻んだ。

「灰原仁司」

声が掠れる。

「……私に話を聞きに来たんじゃなかったの?」

返事はない。唇が耳たぶから鎖骨へ滑り落ちる。歯が襟の縁を噛み、ぐいと引き下げた。肩と、鎖骨の下の白い肌が...

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