第49章 洞窟

灰原仁司の喉仏がごくりと上下し、反射的に一歩引く。だが、杉浦杏奈に腕を引かれ、すぐさま引き戻された。

かちり。

ベルトのバックルが外れる。

杉浦杏奈は彼の襟元を掴み、自分の前へぐいと引き寄せた。

「灰原社長、忘れたんですか?」

その手が藤原智彦の下半身を撫で回す。けれど、肝心なところには触れない。

灰原仁司の脳裏に、前に洞窟で交わしたあの馬鹿げた情事がよぎった。ベッドの上で乱れきった杉浦杏奈の姿。艶っぽく、挑発的で、どうしようもなく色っぽいあの顔まで。

一歩踏み出しかけた、その瞬間。

杉浦杏奈はふっと手を離し、彼の脇の下をするりとくぐり抜けた。

「永井秘書、エナジーバー食べ...

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