第213章オブザベーション

そう考えると、コンラッドは胸の奥がざわついた。

彼女は彼の常連の患者ではない。これまでの接点といえば、あのクルーズ船の表彰式で顔を合わせたことがあるだけだった。

そのとき少し言葉を交わしたものの、取りとめのない世間話に終始し、肝心なことは何ひとつ話していない。

「コンラッド」

リリーは向かいの椅子に腰を下ろし、マスクを外した。「お邪魔してごめんなさい」

コンラッドは驚きを素早く胸の内にしまい、職業的で柔らかな笑みを作る。「リリー。ここで会うとは思わなかったよ」

リリーは鞄を脇に置いた。「ええ。ちょっと……心理的なことで聞きたいことがあって」

コンラッドはそれ以上詮索せずにうなずい...

ログインして続きを読む