第10章

月の光が降り注ぐ高校のキャンパスは、ひときわ静寂に包まれていた。私はグラウンドを横切り、足早に進む。しかし、私の心臓は、先ほど蓮司と対峙した時よりも、ずっと激しく、不規則なリズムを刻んでいた。

湊斗がここにいることは、疑いようのない確信だった。別の時間軸で得た記憶が、私にそう告げている。木曜の夜、彼はいつも、この体育館で空手道の練習に打ち込んでいるはずだから。その記憶が、私の焦燥感をさらに煽る。

「いた……なんて言おう?」

体育館のドアの前で立ち止まり、両手を固く握りしめる。

「別の時間軸で、彼は私のためにすべてを犠牲にしてくれたんだ……」

脳裏に、津波のように辛い記憶が押...

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