第11章

目が回るような感覚が、ようやく収まった。

高い場所から突然落ちたかのような眩暈に襲われる。朦朧とする意識の中、聞き慣れた声が優しく耳元で囁くのが聞こえた。

「楓花……起きて、楓花……」

ゆっくりと目を開けると、最初に目に飛び込んできたのは、私を優しく見つめる深い青色の瞳だった。長い年月を共に過ごしてきた者だけが持つ、深い愛情に満ちた眼差し。

湊斗……私たち、本当に成功したの?

「おはよう」記憶にあるよりも大人びて、優しい声だった。「今日は、僕たちの五回目の結婚記念日だよ」

五年……結婚……

猛烈な歓喜が胸に込み上げてきた! 最後の記憶は、まだキャンパスの月夜の晩、二...

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