第11章 神経性損傷

菅田英樹も、この突発的な変化に言葉を失った。殴られて呆然としている妻と娘。次いで、まるで他人を見るような冷え切った目をした娘――菅田美波。視界に入るものすべてが現実味を失い、頭の中が真っ白になる。

リビングは、死んだように静まり返っていた。

菅田美波の視線が、最後に菅田英樹へ落ちる。そこには、言葉にしづらい複雑な色が一瞬だけ滲んでいた。

妻子の口元には血。目の前の娘の瞳には、温度というものが一切ない。怒りと屈辱が、理性の堤防を一気に決壊させた。

菅田英樹は勢いよく手を振り上げ、菅田美波の頬を叩こうとした。だが――さっき、灰皿を握り潰した光景が脳裏に焼き付いている。手首が、ほんの一瞬だ...

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