第27章 冷静な少女

毛利直哉は早足で歩み寄り、菅田美波の前でぴたりと止まる。わずかに顎を引き、疑いようのない威圧感を滲ませながらも、どこか抑えた恭意を含んだ声で告げた。

「菅田さん。毛利直哉です。到着が遅れ、申し訳ありません」

菅田美波は、淡く「……うん」とだけ返した。

その視線は冷ややかで、余計な波がない。毛利の来訪すら想定内だとでも言うように。

青木正博市長は、毛利直哉の姿を認めた瞬間、瞳孔がきゅっと縮んだ。胸の奥が、どん、と揺れる。

毛利直哉。

法曹界では、ほとんど伝説の名だ。手がけた案件は無敗。報酬は桁外れ――いや、常識の外。

青木は知っている。自分の背後にいる「主家」ですら、この男に頭を...

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