第37章 救った相手は帝都大学の学長

男が言い終えるか否かのうちに、仕立てのいい服を着た、骨太で引き締まった体つきの中年が人波をかき分けて駆け寄ってきた。床に崩れた老人へ膝をつき、息を整えたばかりの身体を慎重に抱え起こす。声には安堵と、遅れてきた恐怖が滲んでいた。

「高坂さん、大丈夫ですか!? いま救急で――病院へお連れします!」

「……いや、もういい」

高坂と呼ばれた老人は手を振り、何度か深く息を吸った。顔色はまだ青白い。それでも濁っていた眼は、すでに冴えを取り戻している。

彼は周囲の慌ただしい促しには見向きもせず、視線だけを菅田美波へ釘づけにした。風霜をくぐり抜けた目に宿るのは、九死に一生を得た者の感謝と、隠し切れな...

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