第40章 なりすまし

バックミラーをそっと盗み見て、社長の嵐の前触れみたいな低気圧を受け止める覚悟をした。

――が、菅田承吾の顔に怒りは一欠片もない。

ただ、窓の外にある細い背中を、黙って追っているだけだった。華奢なのに、妙にまっすぐな背。彼女が金色にきらめくホテルのロビーへ吸い込まれ、姿が見えなくなるまで。

しばらくして、ようやく視線を引き戻すと、菅田承吾は口元だけで深く――やけに愉しげに笑った。

面白い。

本当に、どんどん面白くなってきた。

一方その頃。

菅田美波がT市で巻き起こしたもう一つの騒ぎは、ネット上でなおも燃え広がっていた。

帝都大学の学術フォーラムは、削除された『世紀の難問』の神回...

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