第41章 人は戻った、心は変わった

菅田雨子の頬は、とっくに熟れた林檎みたいに真っ赤だった。羞恥に耐えきれず俯くと、胸の奥で心臓がどくどく暴れだす。いまにも肋骨を突き破って飛び出してきそうで――。

彼が……彼が、口元を拭ってくれた。

その事実だけで、雨子の胸は熱い幸福で満ちていく。これは、脈ありの合図に違いない。

甘い期待が心の底でふくらみ、発酵して、ついに大胆な考えが形を取った。

指をもじもじ絡めながら、いかにも何気ないふうを装って顔を上げる。無邪気で、好奇心だけが先に立った声を作って。

「九条教授って、こんなに優秀で、それにすごく気が利くじゃないですか。彼女さん、絶対しあわせですよね?」

完璧な探りだった。知り...

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