第53章 彼女はいったい誰なのか

青木正博は急須を置き、背筋を伸ばす。顔に浮かべた笑みは、いかにも「市長らしい」絶妙な加減だった。

「こちらは菅田さん。私の大切なお客様です」

原野秀明は、足元がぐらりと揺れた気がした。

菅田美波の、波ひとつ立たない表情を見つめても――どうしても「市長のお客様」という言葉と結びつかない。

思わず口をついて出る。

「菅田くん……きみ、どうして青木市長と……」

その瞬間、原野家だけではない。菅田家側の親戚たちも、一斉に耳をそばだてた。

菅田宗岡は、侄の顔を凝視したまま息を呑む。心臓がどくどくと暴れ、荒唐無稽で、それでも背筋が冷えるような想像が頭をもたげる。

青木正博の視線が個室をゆ...

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