第182章

今のところ彼が怒りをぶつけてくる様子はない。高橋玲は黙って背筋を伸ばし、嵐が過ぎ去るのを待つ小動物のように気配を消した。

「どんな夢を見た?」

藤原時夜が唇の端を吊り上げ、氷のような声で問う。

高橋玲は瞬きをし、それが自分に向けられた問いだと理解する。

「……忘れました」

本当に忘れたわけではない。ただ、あの夢を口にするわけにはいかないのだ。

あの短い仮眠の間、高橋玲は悪夢に囚われていた。夢の内容は、あの黄昏時の部屋で未遂に終わった行為の続きだ。

夢の中で肌に押し付けられる肉体の感触も、耳元の荒い息遣いも、あまりに生々しかった。彼女には抵抗する力など微塵もなく、まるで底なし沼に...

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