第186章

低く、少ししゃがれた彼の声が、池島叶月の浮ついた妄想を断ち切った。

本来の目的を思い出し、池島叶月は照れ隠しに耳元の後れ毛をかき上げる。

「あの……藤原社長。ここに来る前に調べたんですが、この数日、N国である個人収集家がオークションを開催しているそうで。家族や友人にプレゼントを買いたいんです。だから……」

藤原時夜は彼女のつむじを見下ろし、眉を寄せて言った。

「俺に金を借りたいのか?」

まさかそう受け取られるとは思わず、池島叶月は慌てて手を振る。

「ち、違います」

即座に否定したものの、彼女は少し躊躇した。今回の出張はあくまで仕事のためだ。藤原時夜のような冷淡な人間が、本当に付...

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