第192章

池島叶月は当初、夏川風と同じように藤原時夜の背後に控えていた。

しかし交渉があまりにも長引いたため、彼女の両脚は微かに震え始めていた。

それを見かねたメークがエリスに指示を出し、彼女と夏川風のために椅子を用意させたことで、ようやく二人の脚は解放されたのだった。

DGグループとの提携交渉は極めて順調に進んだ。だが、ホテルの送迎車に乗り込むや否や、藤原時夜は手首のダイヤモンドウォッチを外し、無造作に夏川風へと差し出した。

夏川風は目を丸くした。一体どういうことだ。

藤原社長はつい先ほど、この時計を気に入っていると言っていたばかりではないか。それを、こうもあっさり自分に?

「藤原社長、...

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