第20章 少し冷静になれ

藤原時夜は彼女を無言で見つめていたが、突然彼女に迫った。

高橋玲は反射的に後ずさりしたが、背後は壁で、もう下がれなかった。

藤原時夜は両腕を広げ、彼女を壁と胸の間に閉じ込めた。

高橋玲はその圧迫感に頭皮がゾクゾクするのを感じた。

額には細かい汗の粒が浮かんでいた。

頭上から藤原時夜の皮肉な声が聞こえてきた。

「私と取引だと?高橋玲、お前の高橋家に俺が持っていないものがあるのか?」

高橋玲は鼓膜がビリビリするのを感じ、しゃがみ込んで彼の腕の下から身をひねって逃げ出した。

体勢を立て直しても、彼女は少しも怯えた様子を見せず、話を続けた。

「藤原社長、高橋家は私にとって大切なもの...

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