第23章 水原夫婦

話し終わると、藤原時夜はこれ以上留まる気はなく、踵を返して足早に立ち去った。

よく見れば、わかるはずだ。

彼の足取りは慌ただしく、まるで逃げ出すような様子さえあった。

高橋玲は彼の言葉に衝撃を受けていた。

喉が乾くほど話し続けたのに、まったく無駄だったというわけだ。

彼女は足を踏み出して追いかけようとした。

「藤原時夜、待ちなさいよ!」

しかし水原さんに腕を掴まれた。

高橋玲は振り払おうとしたが、相手がお年寄りだと気づいて。

怪我をさせるのを恐れ、あまり力を入れなかった。

再び振り返った時には、藤原時夜の姿はもう見えなくなっていた。

もう終わりだ。この郊外ではタクシーも...

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