第257章

高橋玲が弁当を届けに来たという噂は、瞬く間に社内へ知れ渡った。

社長室のあるフロアが一般社員の立ち入りを禁じていなければ、野次馬でごった返していたことだろう。

以前にも高橋玲は弁当を持参したことがある。だが、あの頃の藤原時夜は頑なだった。一口も手をつけず、すべて捨てさせていたのだ。

それがどうだ。離婚した今になって、元妻の弁当の差し入れを黙認している。

おかしい。どう考えても異常事態だ。

社員たちはひそかにボスの噂話に花を咲かせ、高橋玲に対する見方をまた少し改めるのだった。

高橋玲は迷うことなく社長室へと向かった。

中へ入る手前で、池島叶月と鉢合わせる。

二人が最後に顔を合わ...

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