第35章

夏川風は車の中で待っていて、もう眠りに落ちそうだった。突然、誰かが窓をノックする音が聞こえた。

彼はすぐに目を覚まし、今回藤原時夜が一時間も経たないうちに出てきたことに驚いた。

「藤原社長、これからどちらへ?」

藤原時夜はこめかみを揉みながら後部座席に身を預け、少し疲れた声で言った。

「黄昏へ行け」

黄昏は前回藤原時夜が高橋玲を連れて行った場所だった。前回は不愉快な結末になったが。

しかし藤原時夜はVIP客であり、彼が行きたいと言えば誰も止める者はいない。

今日は足立卓夫との飲み会の約束があったし、ちょうど気分も優れなかったので、軽く一杯やるのも悪くない。

夏川風はうなずき、...

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