第44章

彼が言い出さなければよかったのに、牛田社長のことを口にした途端。

高橋玲は怒り出し、言葉に火薬の匂いが漂った。

「私をあなたが牛田社長に差し出したんじゃない?彼を殴って何が悪いんだ?喉元に刃物を突きつけられて抵抗しないのか?明らかに被害者は私なのに、三日三晩も土下座させられた。忘れたか?」

この矢継ぎ早の詰問に、足立卓夫も藤原時夜の方を見やった。

こんな陰湿で悪辣なことは、確かに彼のやりそうなことだった。

藤原時夜は彼女の詰問に一瞬戸惑ったように見えた。

だが、すぐに横たわっている鈴木耕也を指差して言った。

「じゃあ、こいつはどうだ?こいつの家がどんな商売をしているか知ってるの...

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