第58章

風間悟司はくすりと笑い、手を伸ばして彼女の髪を撫でた。

さっきからずっと撫でたいと思っていた。高橋玲の今日のヘアスタイルは、柔らかい小さな羊のように見えた。

高橋玲は彼が突然手を出すとは思わず、不意を突かれた。

「景色が見たいなら、東側にロフトがあるよ。案内するから、今度は塀を登らないでね」

高橋玲は気づかれないように半歩後ろに下がった。

「あ……うん、じゃあ特に用事もないし、私もう行くね。さよなら」

そう言って背を向けたとき、風間悟司に手首を掴まれた。

高橋玲が痛みで声を上げ、彼を驚かせた。そんなに力を入れたつもりはなかったのに。

「ごめん、ただもう少し話したいと思って」

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