第85章 彼女と比べる必要はない

彼女は自分なりに「いちばん出来がいい」と思えるデザインを選び、小池爺さんに見てもらうつもりで持っていくことにした。

自信があった。小池爺さんが自分の作品を見て、さらに大原晴樹が後押ししてくれれば――自分はきっと、小池爺さんの弟子になれる。

杏璃はオフィスに丸一日こもり、ようやく支社ロゴのデッサンを仕上げた。

小池爺さんに連絡を入れて、都合がつくと確認できたところで、デザイン画を抱えて向かう。

個室では、熊元友里絵が自分の作品を小池爺さんの前へすっと差し出し、強張った表情で息をのんでいた。

小池爺さんがざっと目を通した、そのとき――。

コンコン、と扉が叩かれる音。

この時間に来る...

ログインして続きを読む