第12話

電話の向こうでまだ不満を並べ立てる梨乃に、私は呆れて首を振った。

「あの人、何を考えてるんだか。昔から変な人だけど」

ずっと離婚したがっていたのは彼の方なのに、いざ本当に別れるとなると、今度は渋り始めるのだから。

「まあいいや、あいつのことは。ねえ葵、今夜抜け出せない? サプライズを用意してるんだけど」

梨乃がもったいぶった声で探りを入れてくる。

私は苦笑して断った。

「無理だよ。今日は実家に一泊しなきゃいけないから」

梨乃は心底惜しそうに息を吐く。

「そっか、残念。せっかく『黄昏』でボックス席を取って、ホストを八人も呼んだのに!」

私はスマホをスピーカーモードに切り替え、...

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