第19話

寧々は満面の笑みを浮かべ、和也の元へ小走りで駆け寄った。

彼女が何を囁いたのかは分からないが、和也はたちまち険しい顔つきになり、私のいる方へ真っ直ぐに向かってきた。

ふいに嫌な予感が胸をよぎり、本能的に逃げ出したくなる。

だが、二、三歩も行かないうちに背後から追いつかれた。

「葵」

退勤時間帯で、周囲には人が多い。

面倒を起こしたくなくて、私は聞こえないふりをし、さらに歩調を速めて彼を振り切ろうとした。

しかし和也に諦める気配はなく、私の背後から直接声をかけてきた。

「何を逃げてる? 俺の顔を見るのが怖いのか? それとも、俺たちの関係を他人に知られるのが怖いのか?」

その含...

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