第10章

一億円? 思わず噴き出しそうになった。

「もう遅いわ、隼人」完全に冷え切ってしまった心で、私は彼を見つめた。「あなたは本当の愛の意味なんて、一度も理解したことがなかったのね。一億円? 愛がお金で買えると思ってるの?」

「麗華! そんなことしないでくれ!」彼は必死に私のドレスの裾を掴んだ。「僕たちには、美しい思い出がたくさんあるじゃないか!」

美しい思い出? 思い出すのは、彼に冷たくあしらわれた幾多の夜。そして、人知れず一人で泣き明かした日々。

「美しい思い出ですって? 私のプロポーズを何度もはねのけた記憶のこと? それとも、私の陰で純子とデートしていた記憶のことかしら?」...

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