第54章

来訪者はマスクをしていたが、気品のある雰囲気を漂わせていた。

顔を見なくても、あの高雅な気品は誰も真似できないものだった。

山崎川。

藤原南も彼を見かけ、深遠な眼差しを向けると、一瞬で微笑んだ。

「やはり山崎さんですね」

山崎川は全身から冷淡さを漂わせながら「藤原さん」と返した。

そう言うと林田澄子を腕に抱き寄せ「妻に何か用でも?」

「林田さんにお願いしたいことがあって、ちょうど食事にお誘いしたところです。山崎さんもご一緒にどうですか?」

「おじいさんから電話があったのか?」山崎川は林田澄子を見た。

「今夜は本家に戻る予定だ」

「ええ、ありました」林田澄子は彼の手を軽く押...

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