第5章

 上質な紙袋を提げ、VIP病室のドアを押し開ける――中に入っているのはアリアの大好きなフレンチマカロンだ。わざわざマンハッタンのあの店まで足を運んで買ってきたものだ。

 ベッドはもぬけの殻だった。

 シーツはきれいに畳まれ、まるで誰も寝ていなかったかのようだ。

 眉をひそめて室内を見回し、バスルームのドアを開ける――誰もいない。廊下を通りかかった看護師を見つけ、俺は飛び出した。

「妻はどこだ? 検査にでも行ったのか?」

 看護師はきょとんとした。

「コンスタンチン夫人なら、昨夜のうちに退院手続きを済ませましたが……ご存知なかったのですか?」

 俺の顔色が一瞬で変わった。

 部...

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