第88章

むせ返るような甘い芳香の中に、鉄錆のような血の匂いが混じり合っている。私は無意識に眉を顰め、口元を手で覆った。

「中にいます」

先頭を歩くコールが、いち早く室内の惨状を確認したようだ。

私は足早に踏み込んだ。真っ先に視界に飛び込んできたのは、ワインレッドのシーツが敷かれたキングサイズのベッドだ。

ルカはヘッドボードに背を預け、ベッドの上に座り込んでいた。片手は銀色の手錠でベッドの柵に繋がれ、自由なほうの手は自身のベルトを死に物狂いで握りしめている。指の関節が白く浮き出るほどの力で。

その傍ら――床の上には、エミアがうつ伏せに倒れ、ピクリとも動かずにいた。

コールが浴室やクロー...

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